大きな木の下で瀧は立ち止まる。ザワザワと風が葉を揺らしていく。瀧は揺れる葉を見つめながら話した。

「俺、いじめられているじゃけん。だからあそこにいる村人の気持ちが一番わかる」

「いじめ……」

未来の胸がドクンと音を立てる。いじめられているなど、仲間のために戦う瀧を見ていると想像もできなかった。

「殴られて、蹴られて、悪口言われて、物を壊されて、誰にも相談できずに抱えてる。この現実とは違って自分がヒーローになれる場所に逃げてた。でも、俺と似ている村人を見て違うって思った」

未来たちを見つめた瀧の目は、今までで一番優しく強い目だ。

「俺、現実でも立ち向かうって決めた。もう逃げない。……聞いてくれてありがとう」

「……話してくれて、ありがとう」

未来たちがそう言うと、瀧の目から涙がひと筋こぼれ落ちる。大地がポンと瀧の肩を叩いた。



暗く重い雲が空を覆っている。崖の上に建つ巨大な城の中には、玉座の上に女性が座っていた。黒いドレスを着た女性が悪魔たちから話を聞いている。

「……また、あの子の願いを叶えてあげられなかったわね」

女性はそう呟き、傍らに置かれたブラックチェリーを口に運んだ。