肩ほどまである髪を結びながら、未来はポツリと呟く。鏡に映るその顔はどこか悲しげだった。

「未来、早くしろよ〜!!」

兄が呼ぶ声がする。これ以上遅くなればまた頭を叩かれるだろう。未来は「今行く〜!!」と大声で言い、もう一度鏡に映る自分見つめた。そして、貼り付けるようにニコリと笑顔を作る。

「今日も笑わなきゃ!」

そう明るく言い、未来は部屋のドアを開けて外へと向かった。



同時刻、ブラウンのコートを羽織った金髪の男性が通りを歩いていた。男性の歩いている通りはまるでヨーロッパを思わせる風景だ。

「先生、きちんと仕事してるのかなぁ。この前行ったらトルテを食べてサボってたし……」

不安を感じながら男性はある一件の家の前で立ち止まる。巨大なプールや噴水のある赤い屋根の三階建ての豪邸だ。男性がドアをノックするとギイッとドアが開く。男性は豪華な調度品が置かれた豪邸の中に入り、廊下を進んでいった。