あの日の初恋を君に〜六人の主人公〜

「あなた誰？ていうか、そのピザ超おいしそう……」

まだお昼を食べていない未来のお腹がグルルと音を立てる。女の子は「馬鹿！これは私がイタリアで買ったピザだ！」と慌ててピザを口に入れていた。

「コホン！いきなりのファンタジー展開だが、お前は今私が書いている小説の中にいる。私のリフレッシュのため、お前が私の代わりに小説を書いてほしい」

「えっ？どういうことですか？」

未来は首を傾げる。階段から落ちそうになっていきなりこんな場所にいたのだ。どんな人でも戸惑うだろう。しかし、ただの夢ならば空腹感や草の感触などがリアルだ。

「ああ、もう！シトロン！！この馬鹿に私の代わりに説明しろ！！」

焦ったそうにそう女の子が言うと、「は、はい！」と言いながら未来の前にブラウンのコートを羽織った男性が現れる。

「初めまして。僕はシトロン・ボードレールと言います。こちらはミーナ・シャネル先生です」

「は、はあ……。榎本未来です……」