杏菜がまかないのドリアを食べている間も、女性たちはクラリネッタ王国のダミアン王子のことばかり話していた。

「ダミアン王子ってイケメン王子ランキングで一位なんでしょ?」

「ヴァイオリンとピアノが弾けて、旅行と乗馬が趣味なんですって!」

「こんな人に愛を囁かれたらとろけちゃいそう……」

頬を赤く染める女性たちをチラリと見て、女の子らしいなと思いながら杏菜はまたドリアを口にする。

それから仕事に熱中しているうちに、杏菜はダミアン王子のことなどすっかり忘れてしまった。



数日後、杏菜は仕事が休みだったため、雑貨屋に足を運んでいた。部屋に新しい小物を置こうと考えたのだ。

「雑貨屋に行く前にフラペチーノでも飲もうかしら……」

杏菜の目の前にスタバが見えていた。今日から新発売のフラペチーノが出るためか、そこそこの列ができている。

フラペチーノの写真を見て、杏菜は飲みたくなってしまった。吸い寄せられるようにスタバの列に並ぶ。杏菜の前に並んでいたのは、杏菜よりずっと背の高い外国人だった。ブラウンの柔らかそうな髪におしゃれで高そうな服を着ている。