君と最後の夏花火


「父さんは甘いもの苦手だぞ?」

「この前 ショコラ食べてたから いけるかなと思って!」

「あれはビターだからな。
苦いぞ〜。」

俺がそう言うと 小夏は顔をしかめた。

「たくちゃんパパ凄いね…。
私はコーヒーも飲めないのに…。

ん〜…じゃぁ アレにしよう!」

「……アレ?」

小夏のいるりんご飴の屋台に追い付き、「りんご飴1つ下さーい。」と言う小夏に首を傾げる。

「そう! 夏祭りと言えば たこ焼き でしょ!」

りんご飴を受け取りながらドヤ顔で言う小夏に俺はクスリと笑いが零れた。

「えっ、変!?」

「いや、小夏らしいなと思って。」

右手の甲で口と鼻を隠して笑う俺を小夏は嬉しそうに笑った。

「でしょ!
えっと…今は…19時34分で…花火上がるのが21時ちょうどだから…。」

「20時45分に買いに行くか。」

「だね!」

スマホで時刻を確認し、買いに行く時間を決めたあと、俺達はまた屋台を回った。

そして父さん用のたこ焼きを買ったあと、ある場所へ向かう。

「でもさ、正直びっくりした!」

「なにが?」

「だって、たくちゃん 今まで袴着て来たこと無かったんだもん。」

「あ〜、そういや着たこと無かったな。
歩きずらいし…それに…。」

「わっ!!!」

「……こうやって転びそうになったことあるし…。」

転びそうになった小夏の腹に右腕を回し、回避する。

ハッと我に返り、小夏の体制を直し腕を小夏から離した。

「……そ、そう言えば小学生の頃にあったね!」

分かりやすく動揺し、慌てて前を歩く小夏を見て足を止めた。

「遠いな…。」

「えっ? って たくちゃん!?」

距離が離れたことに気づいた小夏が慌てて俺の元へ来る。

「もう! ちゃんと着いてきてよ!」

そう言って俺の手首を掴んで小夏は歩き出した。

「あの時と逆だな。」

俺の言葉に、小夏はクスリと笑う。

「うん、私も同じ事考えてた。」

俺達が初めて2人で祭りを回ったのは小3の時だ。

と言っても実際は小夏の両親とはぐれたのだが…。

あの時、はぐれた事に気付いた小夏はボロボロと泣き出して、俺が小夏の手を引いて人の少ない所に移動した。

「たくちゃんが誘導してくれた場所が花火が良く見える絶景スポットだったんだよね。」

「あぁ、小夏は泣いてたのに花火見た途端、一気に笑顔になったんだよな。」

「花火の音と綺麗さで涙引っ込んじゃったんだよ。」

軽い坂道を登り、ベンチが1つだけあるだけの小さな広場に着く。

「花火が終わったあと直ぐにおじさん達がむかえにきてくれたっけ。」

「うん、花火には目もくれず 必死に探してくれたんだよね…凄い怒らえたけど…。」

「俺はお礼言われたっけな。」

「あの時は、なんでたくちゃんだけ…って思ってたよ。」

「ははっ、だろうな。
すげぇ 睨んでたから怖かった。」

俺のその言葉で、会話が止まる。