君と最後の夏花火


20✕〇年 8月 夏祭り。


「たくちゃん たくちゃん!
射的あるよ! やろうよ!」

「去年 1個も取れなかっただろ?」

「今年こそは取れるもん!」

あんなに泣いていた面影を引きずることも無く、小夏は紺色の生地にピンクと水色の輪柄と赤い金魚の浴衣を身に纏い、肩下の髪を団子頭にして、いつもと違う大人っぽい姿をしている。

何度も見たはずの君の浴衣姿なのに、あの日の君は、"昨日"までに見た中で 断トツに綺麗だった…。

君と見る最後の花火だったからかももしれない。

きっと、そうだろう……。


「たくちゃん、取りすぎ…。」

「えっ?……あっ…。」

小夏の声に我に返ると横には大量のお菓子やオモチャ。
いつの間にか人も集まっていた。

「兄ちゃんすげぇ! スナイパーみてぇ!」

キラキラとした瞳で俺を見る小学生に苦笑いを返し、オモチャをその小学生達に渡して小夏とその場を退散した。

「たくちゃん、射的やったらいつも我を忘れるよね〜。」

小夏は俺が取ったお菓子のポッキーを食べながら「5回はやってたよ。」とクスクスと笑う。

「射的する時って 飾ってある景品全部落としたくなるんだよな。」

俺は屋台に並んでいた品数を思い出し、笑って言う。

「それ実行したら屋台のおじさん泣いちゃうよ。」

小夏は苦笑いで言うと、りんご飴と書かれた屋台を見つけて俺を置いて掛けて行ってしまった。

咄嗟に手を伸ばそうとして、やめた。

「たくちゃん! りんご飴だよ!
たくちゃんママのお土産にしよ!
たくちゃんパパはカステラ!」

屋台を指さして笑う小夏を軽く笑って歩いて追う。