君と最後の夏花火



「…たくちゃん…ちゃんと、諦めるから…。
これで、最後だから、1つだけ…私のお願い聞いて?」

小夏は俺に背を向けたまま、そう言った。

無理に上げた声のトーン…。
クッ…と零れる 鳴き声を殺す声…。

「なに…。」

震えないように、俺は深呼吸をした後 それだけ返した。

「明日、お祭りあるでしょ?
毎年、いつも2人で行ってたお祭り…。」

「あぁ…。」

「今年だけ…明日だけ…。
私と一緒にいて欲しい……。
ねっ、いい、でしょ?」

君は、なんて残酷な人なのだろう……。

君から聞こえる涙を堪える声と、震えている声。
わざとらしい声の高さ…。

思い出すだけでも、胸が苦しくなる…。

「明日、だけな…。」

グッと握りしめた手から、血が滲む。

君は知らないだろう……。

俺の想いも……。
あの時俺の目の前で泣く君を見て、どんなにこの手で抱き締めたかったか…。

君を突き放した瞬間 後悔し、張り裂けそうな胸とともに 泣きたくなる衝動を…。
手から血が出るまで固く握りしめるほど 必死に耐えたかを…。

君は、知らないだろう……。

約束の日、浴衣を着て嬉しそうに花火を見あげる君を、どんな気持ちで見つめていたかを……。

君は、知る由もないだろう……。