君と最後の夏花火


「やめろ…。」

俺は小夏の口を右手で塞いだ。

「それ以上言うな…。 聞きたくない…。」

俺は俯いて言うと、右手に生暖かい何かが落ちた。
しかしそれは、直ぐに冷たくなる。

小夏の顔を見ると、小夏の目からは涙が溢れている。

慌てて手を離し、小さく「ごめん」と呟いた。

「たくちゃん…。
たくちゃんの抱いてる感情は、私と同じ?」

震える小夏の声が、更に俺自身を嫌いにする。

「違う…。」

「ねぇ たくちゃん、私の顔見て言ってよ!」

震える声で、でも 強い声で言う小夏に、少し視線を向けた。

「俺の「好き」と、小夏の「好き」は違う。」

小さい声だが、静かなリビングには充分すぎる声だった。

小夏はまた俯いて、黙った。

「たくちゃん…私の気持ちは、たくちゃんの重りになる?」

その言葉に、俺は強く返したくなった。

『小夏は幼馴染として俺が好きで、俺の「好き」と小夏の「好き」は天と地ほどの差があるんだ。』と…。

でも、そう返せば 小夏はきっと、俺の言葉を全否定するだろう。

『違う! 私はたくちゃんを幼馴染としては見てない! 私はたくちゃんを、男の人として見てるんだよ!』って…。

だから、ごめんな……。

「あぁ…。夢がある俺にとって、お前の感情は荷物でしかない。」

俺は、お前の悪役になるよ……。

「……そっ…か…。
うん、分かった…。」

小夏はそう言って俺に背を向けた。


君は、知らないだろう……。

あの時、どんなに俺自身が言った言葉を撤回して、今すぐにでも本当の気持ちを言いたかったか…。

どんなに、目の前にある小さくか弱いその体を抱きしめたかったか…。

でもそれは出来ない……。

それをするのは、俺じゃない…。

声を押し殺して泣く君を見て…何度も何度も、自分を恨んだ…。

自分自身を、殴り殺したい程に……。