シンと静まる重い空気…。
壁を隠すほどの本棚には医師に関する本がズラリと並べられている。
夢に向かって夢中に勉強出来る俺のお気に入りのその部屋は、今の俺にとって 自分を追い詰める地獄部屋にしか感じなかった。
深い呼吸を数回繰り返し、勉強部屋を出て鍵を掛ける。
俺が階段を降りる音以外の物音がしない事から、きっと小夏は自分の家に帰ったのだろうと解釈しながら小夏といたリビングに戻る。
小夏の泣きそうな表情を思い出しては、締め付けられる様に苦しくなり、何かに当たりたくなる…。
リビングのドアを開けると案の定、小夏の姿はなかった。
だが、リビングに小夏の纏う香りが漂っている。
「あぁ…もう!
だから嫌なんだ!」
グシャグシャと右手で自分の髪を乱し、ソファにドサッと座る。
「あいつは、何も分かってない…。」
ソファの腕掛けに肘を立てて頭を抱える。
俺の気持ちも、小夏の自分自身の気持ちも…。
あいつは全くわかっていない…。
俺の事も、本気じゃないくせに……。
「なんで、あんな顔するんだよ…。」
ポツリと呟いた声に、ガタッと音がした。
目を見開きバッと後ろのキッチンを見ると 小夏が顔を俯かせて立っていた。
「はっ? なんで…帰ったんじゃ…。」
俺の話を聞くこともなく、小夏は俺に向かってズンスンと歩いてくる。
「えっ? 小夏? お……」
おい と言おうとしたのを 喘ぎられた。
「なんでって…なんで? なんで分かってくんないの? 私はいつも真剣だった!
付き合おう って言っても 無理 って返したのたくちゃんじゃん!
私がどんなに辛かったか分かる?
どんなに胸が張り裂けそうになったか分かる?
なのになんで…なんでたくちゃんは…真剣に考えてくれないの…?
無理って言っときながら…なんで、そんなに苦しそうな顔するの…。
分かんない…分かんないよ…。
たくちゃんは、私の事…どう思ってるの?
ただの幼馴染み? それとも……」


