20✕○年 8月


学生時代の夏休み真っ只中。
夏の香りと蝉の声、
賑やかで、楽しそうな話し声…。

そして…


「たーくーちゃーん!
おっはよう! 遊びに来たよ〜…って、また漫画読んでる!」

「うるさ過ぎる幼馴染の声………。
夏だなぁ…。」

ノックもせずに部屋に入ってきた俺の幼馴染である広川 小夏は今日も無駄に元気がいい。

「人を蝉みたいに言わないで!」

「はいはい…それよりどうした?
遊びに来るだけじゃ俺の部屋来なくていいだろ。」

読んでいる漫画に視線を直し、気だるげに返す。

「何さ! 別にいいじゃない
カレシの部屋に来ても それとも何? カノジョの私に見せられないものでもあるの?」

「いやいや…。」

「分かった! エロ本だな?
うんうん、たくちゃんも男の子だもんね!
エロ本の1冊や2冊は持ってるよね〜。」

腕を組んで何度も頷く小夏は俺の話を聞かずに1人で納得している。

「エロ本なんてある訳ないだろ?
それに、お前と俺はカレカノ以前に付き合ってないだろ。」

俺はまた漫画から視線を外し小夏に視線を向ける。

「いやいや、普通の純粋な男子は持ってるでしょ…。」

「純粋なら尚更持ってねぇーよ…。
健全だろ?」

「あっ、そうそうそれそれ!」

俺が撤回すると俺に人差し指を向けて言う小夏に「人に向かって指を指すな。」と睨み付ける。

「にしても…見事にゲーム、漫画部屋になったねぇ…。」

「話を聞け。」

俺の注意に耳を傾ける訳もなく、小夏は俺の部屋を見渡す。

ベッドがある窓側以外の部屋の壁を覆い尽くす本棚、そこに並べられているのは大量の漫画。
巨大テレビを乗せているテレビと同じ大きさの収納棚には大量のカセットやゲーム機。

大きいガラステーブルの上には、今読んでいるアニメ化決定の大人気漫画、『デスバトルライフ』の1巻から最新号の35巻までが積み上げられている。

ベッドの布団は白いシーツ以外真っ黒で、ベッドの上には青のスマホと白いイヤホンが置いてある。

そして俺はガラステーブルと後ろにあるベッドに挟まれている二人がけソファに座り、『デスバトルライフ』の24巻を読んでいた。