君と最後の夏花火



「たくちゃん、ありがとう…。」

その言葉の意味は、どっちの「ありがとう」なのかは未だに分からない。

花火の音に掻き消されるように、微かに聞こえた君の声は、俺の耳には はっきりと聞こえたんだ。

色とりどりで、様々な形の花火を見上げる君の姿を、この時期になると いつも思い出す……。



夏の香りと蝉の声…。

弾けた楽しそうな話し声……。

そして……


「たくちゃん、ありがとね!」

純白のドレスに包まれて 美しい涙を一筋流して綺麗に笑う君の笑顔……。

"今日"、ずっと傍にいた 俺の知る君の 広川 の苗字と、これから君の傍にいる人間が変わる。


「小夏、結婚おめでとう。」


きっと、君は知らないんだろうな…。


今君は俺の知る中で1番、輝いた笑顔をしている事に……。


君はきっと、気付いてないんだろうな…。

中学になってから、君は1度も たった2文字の言葉を、俺に言ったことがないことも……。


「小夏、本当はずっと好きだったよ。
結婚、本当におめでとう……。」


そして、さようなら…俺の初恋の人…。

どうか君が、俺の一番好きな笑顔で、笑い続けてくれますように……。





   ℯꫛᎴ