君と最後の夏花火


東京都、新宿駅から徒歩20分。
14階建ての賃貸マンションの自宅に帰る。

カードキーを通し自宅に入れば、青と赤のオッドアイの黒猫、リクが静かにちょこんと座って出迎えてくれる。

「リク ただいま。
待ってろ 直ぐに飯出してやるからな。」

リクを抱き上げてリビングに向い、1つ780円の猫缶をキッチン上の棚から出す。

そして物干し台からリクが好んでいる青いネズミ型の餌入れに入れてリクに食べさせた。

フゥ…とため息を吐き、ネクタイを緩めながら二人がけのソファにドサリと座った。

背もたれに左腕を乗せ、テーブルにある黒いリモコンでテレビを見ると、夜ドラが放送されていた。

なんでも、今人気の恋愛ドラマらしい。

東京に移住してからは夜ドラなんて久しく見ていない。

俺は何となく、そのドラマを観ることにした。

飯を食い終わったのか リクがソファに飛び乗り、俺の膝ですぅすぅと寝始めた。

気持ち良さそうに寝ているリクを撫でながら、視線と意識をドラマに向ける。

このドラマを簡単に説明すると、寿命が後1年しかない高校2年の女主人公が 同じ高校に通うクラスメイトのイケメン男子と恋に落ちるという話だ。

まぁ、ザックリ過ぎるだろうがこんな感じのドラマらしい。

そして、俺が見ているシーンは夏祭りだ。

主人公は自分の寿命が今年で終わることを隠し、男と2人で夏祭りに行く。
そして、花火の音と共に男が主人公に告白、主人公は一筋の涙を流して首を横に振り、音のない返事をした。

それからシーンが主人公の自宅に飛び、主人公はスマホのメッセージアプリから男からの内容に涙を流して ドラマは終わった。


「ベタっつーか…。
女が好きそうなドラマだな……。」

ぐーっと天井に伸びをしながら呟き、リクを抱えて寝室に向かう。

リクを猫専用ベッドに移動させて風呂に入り、仰向けにベッドへ倒れ込んだ。

「夏祭り…ねぇ……。」

額に右腕を置いき暗い天井を見つめる。

「………きれい、だったな……。」

俺はそう呟きながら、睡魔によって意識を手放した。