道端に咲く名前すら分からないような花に目をやりながら、学校への道を歩く。

私の通う高校はこの街でもかなり大きな学校だ。
進学校では無いものの、部活動が盛んで人気が高い。
｢桜木学園｣と言えば、この辺りでは知らない人は居ないだろう。
校舎もここ数年で改装され綺麗になり、あまり厳しくない校則から自由な校風が学生に高く評価されている。

そんな学校の正門をくぐり、教室へ向かう。

ガララ…

教室に入ると真っ先に私の視界に映ったのは
黒髪ロングの女子。

｢おはよー、愛來。｣

教室の後ろの方にある自分の席からひらひらと手を振る彼女はの名前は、本宮早紀（もとみや さき）。

私が親友と呼ぶ唯一の女の子だ。

早紀とは中学一年生からの仲で、席替えで隣になったのをきっかけによく話すようになった。
背中まで伸びたストレートの髪とハッキリとした目や長い手足。
誰がどう見ても美人の部類に入る。
しかも身長も高く、160cmはあるはず。
落ち着いた雰囲気を纏う彼女だが、性格は見た目に反してサバサバしており、面倒事や恋愛関係のトラブルを特に嫌っている。
なのでこれまで彼氏が居たことは無く、好きな人すら出来たことがないと言う。
だが彼女はとても聞き上手な為、私の愚痴や恋バナをひたすら聞いてくれる。

私にとって、何にも代えがたい親友だ。

｢早紀、おはよう。｣

私は早紀に挨拶しながら荷物を机におろす。
早紀の席は私の斜め前で、私の席は窓際の一番後ろ。
先生の視界から外れやすいため、当たり席と呼ばれている。

｢愛來、今日は早かったわね。｣

｢うん。ちょっとうなされて、眠りが浅かったみたい。目覚ましで起きれたのなんて久しぶり。｣

｢うなされた？大丈夫なの？｣

いつの間にか私の前に座っていた早紀が心配そうに聞いてくる。

｢ふふ、うん。大丈夫。
ありがとう。｣

私が笑顔でそう言うと納得いかなそうな顔をした早紀だったが、｢…ま、あんたがそう言うならいいけど。｣と言って笑った。