私は中野愛來(なかの あいら)。
高校2年生で、兄弟はいない。
一人っ子だ。
家からすぐの高校に通っている。
制服が可愛かったのと、あまり勉強が得意ではなかったのとで、私立高校に入学した。
学費を親に払ってもらっているから、勿論勉強は頑張っているけれどこれと言って結果が出たこともまた、1度もない。
私は正直言って、容姿がいい方だと思う。
自分で言うな、と思われるだろうが本心だ。
幼い頃から「可愛い子ね」と言われて育ってきた。
母譲りの白く透き通った肌に、くっきりとした二重の瞳。
色素の薄い柔らかな髪は父譲りだ。
両親ともに整った顔立ちもあり、遺伝した部分も多い。
胸元まで伸ばした髪はゆるく巻き、制服のスカートは1回だけ折る。
決して濃くはない顔に合うようにナチュラルなメイクをしたり、歩き方や話し方も女の子らしく見えるように意識している。
私なりに努力をしたからこそ、
自分に自信を持っている。
周りからどう見えるかはとても大切なこと。
「中身で勝負する」なんてのは本当に性格がいい人か、見た目に自信が無い人の言い訳だ。
私は外見でも勝負出来るようになる為に、
毎日必死なんだ。
かわいくなりたい。
誰よりもかわいくなりたいんだ。
そうすれば、みんな私を見てくれる。
私を好きになってくれる。
私を、必要としてくれるから。
『他に好きな子が出来たんだよね。』
頭の中でこだまする、あの人の言葉。
何度思い出してもやっぱり苦しくて、
思わず顔をしかめた。
その拍子に手から落ちたリップを拾い上げ、
ポーチにしまう。
今でも夢に見る。
サラサラの茶色い髪をなびかせながら、
全てを見透かすかの様な瞳を私に向けて、
いつもと同じ笑顔を浮かべて、
私を捨てた男の夢を。
私が大好きだった笑顔は、きっと私以外にも平等に向けられていたのだろう。
彼は差別をしない人だから、
きっと私を特別扱いなんかしてくれない。
私は彼の特別にはなれていなかった。
私にとっては、
彼だけが特別だったのに。
彼の気持ちは私の気持ちとすれ違うどころか、私に向いた事などなかったんだと思い知る。
それでも私は、彼の事が好きだった。
この気持ちだけは間違いじゃない。
彼を好きになった事を間違いだと思いたくない。
けど、やっぱり苦しいな。
憂鬱な気分になりながらも、登校の準備を済ませた。
机に置いてあるカバンを手に取り、もう一度鏡で身だしなみを整える。
「よし。ばっちり。」
頬を両手でぱちんと叩き気合を入れ、部屋を出た。
「おはよう、愛來。」
キッチンには既に朝ごはんの用意を済ませたお母さんが立っていた。
「おはよう。今日はお弁当?」
「ええ。愛來の好きなおかず入れてるからね。」
「えっ?なになに?」
「それはお楽しみよ♪」
にこにこと楽しそうに笑うお母さんにつられて、私の顔にも自然と笑みが浮かぶ。
朝ごはんを食べ、歯を磨いてお母さんに見送られながら家を出る。
沈みかけた気持ちは既に軽くなっていて、朝見た夢はもう頭から消えていた。
高校2年生で、兄弟はいない。
一人っ子だ。
家からすぐの高校に通っている。
制服が可愛かったのと、あまり勉強が得意ではなかったのとで、私立高校に入学した。
学費を親に払ってもらっているから、勿論勉強は頑張っているけれどこれと言って結果が出たこともまた、1度もない。
私は正直言って、容姿がいい方だと思う。
自分で言うな、と思われるだろうが本心だ。
幼い頃から「可愛い子ね」と言われて育ってきた。
母譲りの白く透き通った肌に、くっきりとした二重の瞳。
色素の薄い柔らかな髪は父譲りだ。
両親ともに整った顔立ちもあり、遺伝した部分も多い。
胸元まで伸ばした髪はゆるく巻き、制服のスカートは1回だけ折る。
決して濃くはない顔に合うようにナチュラルなメイクをしたり、歩き方や話し方も女の子らしく見えるように意識している。
私なりに努力をしたからこそ、
自分に自信を持っている。
周りからどう見えるかはとても大切なこと。
「中身で勝負する」なんてのは本当に性格がいい人か、見た目に自信が無い人の言い訳だ。
私は外見でも勝負出来るようになる為に、
毎日必死なんだ。
かわいくなりたい。
誰よりもかわいくなりたいんだ。
そうすれば、みんな私を見てくれる。
私を好きになってくれる。
私を、必要としてくれるから。
『他に好きな子が出来たんだよね。』
頭の中でこだまする、あの人の言葉。
何度思い出してもやっぱり苦しくて、
思わず顔をしかめた。
その拍子に手から落ちたリップを拾い上げ、
ポーチにしまう。
今でも夢に見る。
サラサラの茶色い髪をなびかせながら、
全てを見透かすかの様な瞳を私に向けて、
いつもと同じ笑顔を浮かべて、
私を捨てた男の夢を。
私が大好きだった笑顔は、きっと私以外にも平等に向けられていたのだろう。
彼は差別をしない人だから、
きっと私を特別扱いなんかしてくれない。
私は彼の特別にはなれていなかった。
私にとっては、
彼だけが特別だったのに。
彼の気持ちは私の気持ちとすれ違うどころか、私に向いた事などなかったんだと思い知る。
それでも私は、彼の事が好きだった。
この気持ちだけは間違いじゃない。
彼を好きになった事を間違いだと思いたくない。
けど、やっぱり苦しいな。
憂鬱な気分になりながらも、登校の準備を済ませた。
机に置いてあるカバンを手に取り、もう一度鏡で身だしなみを整える。
「よし。ばっちり。」
頬を両手でぱちんと叩き気合を入れ、部屋を出た。
「おはよう、愛來。」
キッチンには既に朝ごはんの用意を済ませたお母さんが立っていた。
「おはよう。今日はお弁当?」
「ええ。愛來の好きなおかず入れてるからね。」
「えっ?なになに?」
「それはお楽しみよ♪」
にこにこと楽しそうに笑うお母さんにつられて、私の顔にも自然と笑みが浮かぶ。
朝ごはんを食べ、歯を磨いてお母さんに見送られながら家を出る。
沈みかけた気持ちは既に軽くなっていて、朝見た夢はもう頭から消えていた。
