青い空、白い雲。
絶好のお出かけ日和な本日、なんと彼氏と旅行です。
楽しみすぎて昨日はなかなか寝付けなかった。我ながら遠足前の子供の様で笑ってしまう。
まあそれだけ楽しみだったってことで、ウキウキワクワクしながら乗り込んだ電車で、私は
樹くんの肩にもたれて寝てしまった。

「乗り換えますよ。」

その声でようやく目を覚ます始末だ。

「ああっ、寝ちゃってた。ごめんね、重かったでしょう。」

「いや、可愛くてずっと見ていられたよ。」

「起こしてよー。」

「あはは。」

樹くんはよく笑うようになった。
いや、会社ではあまり笑わないかな?
私といると楽しいって思ってくれているのだろうか、それくらいは自惚れてもいいかな?

「荷物持つよ。」

言うや否や、私のカバンをひょいと取られた。

「ありがとう。」

樹くんの言動にいちいち胸がきゅんとなる。
会社で備品を男性に運んでもらったことはあるけど、こうやって自分の荷物を持ってもらうのは初めてのことだ。いや、そんなことない。樹くんはスーパーでも買い物袋を持ってくれていた。
いつも本当に優しい樹くんは私のことを甘やかしすぎだと思う。でもそれがすごく心地よくて抜け出せる気がしない。

「やっぱり自分で持つ。その代わり、手繋ぎたいな。」

駆け寄ってそう主張すると、樹くんは目を細めて柔らかく笑った。

「了解。」

ぎゅっと握られた手はあたたかくて優しい。
あまりの嬉しさに思わず樹くんを凝視していたらしい。

「なに?キスしてほしいの?」

「えっ、違うっ。」

「なんだ残念。」

繋いだ手が引き上げられたかと思うと、手の甲に軽くキスが落とされた。

「これで我慢しとく。」

何事もないかのように歩き出した樹くんに引っ張られる形で、私も歩き出す。
目的地に着く前から甘ったるくて、この先身が持たない気がした。