「ねえ、樹くんは行きたいところないの?」

「俺は姫乃さんが喜んでるのを見てるのが好きだからなぁ。」

「でも私も樹くんに喜んでもらいたいよ。」

「またそういう可愛いことを言う。」

私ばかりがいつも喜ばせてもらってる気がしてなんだか気が引けてしまうのだが、樹くんは顎に手を当てて少し考え込むと、人差し指をぴっと立てて言った。

「そうだな、じゃあ大河ドラマ展なんてどう?」

大河ドラマ展だなんて、なんて素敵な響き。
毎週楽しみに見ている大河ドラマ。その展示物を見に行くなんて夢のようだ。でもそれは完全に私の趣味であって…。
そうこう考えているうちに勝手に顔が緩んでいたらしい。
樹くんはお腹を抱えて笑い出した。

「姫乃さんわかりやすっ。よくそれで今まで彼氏がいるって思われてましたね。」

「むー。」

「はいはい、ごめんごめん。」

樹くんは笑いながらも両手を挙げてお手上げのポーズをした。

「でも遠いじゃない。」

「旅行ってことで。」

「旅行?!」

彼氏と旅行とか、夢のようだ。
いや、夢じゃない、現実だ。
え、本当に?
心の中が大荒れの私は百面相になっていたらしい。
そんな私を見て樹くんはまたお腹を抱えて笑った。