「…姫乃さんって真面目すぎない?」

「え?」

言っている意味がわからなくて逆にポカンとしてしまう。すると樹くんはクスリと笑う。

「無理してデートっぽくしなくていいんですよ。本当に行きたいところはどこ?」

「いやいや、水族館も遊園地も行きたいよ。」

「当ててあげます。そうだな、博物館の鎧兜特別展か、美術館のミュシャの世界展あたりかな?」

「うっ。」

樹くんは的確なところを突いてくる。
博物館も美術館も大好きだし、その特別展は電車の中吊り広告で見て行きたいと思っていたところだ。

「どう?」

「…それも行きたいです。」

得意気な顔の樹くんに、私は白旗を振った。
私のことはお見通しといった感じが何だか悔しい。だからか、無意識に膨れっ面になっていた私の頭を樹くんは軽くポンポンと撫でた。

「俺は素のままの姫乃さんが好きなんだから、恋人になったからって一般的な模範解答しなくていいです。」

「…はい、すみません。」

上手くやり込められてますますしゅんとなる。
樹くんは年下のくせにしっかりしている。
いや、わたしがぼんやりしすぎているのかな。
ちらりと樹くんを覗き見ると、いつも通り涼しい顔をしていた。そして私と目が合うと甘く笑う。

「まあでもその努力家なところも好きですけどね。」

ストレートな言葉に一気に顔が赤くなった。
ああ、本当に、このドキドキは心臓に悪い。