私は今、樹くんの家で絶賛正座中だ。
というのも、樹くんがめちゃくちゃ怒っているからで…。
原因はもちろん先程の早田課長とのことなんだけど。

大きなため息に私は身を小さくする。

「…ごめんなさい。」

もうそれしか言葉が出ない。
樹くんは冷たく私を睨む。

「姫乃さんさぁ、もうちょっと危機感持ってって言ったよね?」

「はい。」

「俺が見つけなかったらどうなってたかわかる?」

早田課長にずるずるとラブホテルに連れ込まれて、でも早田課長は休憩するだけだからって言っていたけど。

「…どうなってたんだろう?」

「早田課長にやられるとこだったんだけど。今まで何人早田課長に騙されたか知らないの?」

「やられるって…?」

「はぁ。」

ひときわ大きなため息に、私はこの場から逃げ出したくなる。

「早田課長に抱かれるとこだったんだけど!」

「抱かれ…えっ!」

まさか、そんな。
あらぬ想像してみるみる顔に熱が集まるのがわかった。

「だって早田課長、休憩したいって。」

「この鈍感!天然!箱入り! 」

「うっ。そんな言わなくても…。」

罵倒され、じわっと涙が浮かんだ。
確かに危機感なくて鈍感だけど、はっきり言われるとやはり傷付く。

「それとも抱かれたかったわけ?」

私は慌てて首を振る。
まさか抱かれたいだなんて、思うわけがない。

「はあ、今まで無傷だったのが奇跡だよね。」

「無傷?」

「彼氏がいるって思われてた方が安全だったってこと。」

首をかしげる私に、樹くんはビシッと指を立てて言った。