メールチェックをしていると、早速早田課長からの依頼が入っていた。

【LANケーブルのオスを向かい合って挿せるメスのアダプタがほしい。】

意味がわからず私は首をかしげる。
LANケーブルの”オス”って何?
“メス”のアダプタとは?

インターネットで「LANケーブル オス」と入力して検索してみると、普通のよく知っているLANケーブルが出てきた。これを“オス”と言うのだろうか?

「姫乃さん、テレコン貸してください。」

ちょうど樹くんが備品を借りに来たので、私は樹くんに聞いてみることにした。

「ねえ、LANケーブルのオスとメスって何?」

「は?姫乃さん、セクハラですか?」

樹くんが怪訝な表情になるので、私はキョトンとしてしまう。セクハラとは?

「え?どういうこと?」

まったく理解できない私に樹くんは深いため息をつくと、声を潜めて言った。

「オスは挿す方、メスは挿される方。…大人なんだからわかりますよね?」

ああ、そういう…。
って、そういうこと?!
一気に体温が上がり顔が真っ赤になるのがわかった。
そんな私を樹くんは冷ややかな目で見る。

「言っとくけど、セクハラされたのは俺の方ですからね。」

「いや、ごめん。そんなつもりじゃ…。」

「てか、何でそんな話?」

私は真っ赤になった頬を押さえつつ、早田課長からのメールを指差して見せた。
樹くんはさっと目を通すと、なおさら冷ややかな視線で私を見る。

「姫乃さん、セクハラされてますよ。普通、こんな言い方しないから。」

「そうなんだ?ああ、びっくり。聞いたのが樹くんでよかったよ。」

「本当にね。気をつけてください。」

樹くんは私に釘を刺すと、テレコンを持って足早に去っていった。
私はしばらく動揺が抑えられず、ひとり胸のドキドキと戦っていた。