頭を抱える私に、大野くんはふうと息を吐く。そして楽しげに言った。

「しょうがないな、じゃあ俺が彼氏になってあげますよ。」

「ええっ!」

「いろいろ練習したいでしょ?」

「練習?」

「恋人ができたときの練習ですよ。」

た、確かに、何をしたらいいかわからないから、それはありがたいかもしれない。私のダメなところもいろいろ指摘してほしい気がするし。
でも、いいのかな?
後輩にこんな甘えちゃって。
大野くんをおずおずと見ると、頬杖をつきながら余裕の表情で私の答えを待っている。

「えっと、じゃあよろしく、オネガイシマス。」

私の答えに、大野くんは満足そうに微笑んだ。

「さっそくですが、今週の日曜日、デートしましょう。」

「でっ、デート?!ど、どこへ?」

「どこがいいです?姫乃さん行きたいところあります?」

行きたいところを考えてみる。
今私が行きたいところは…。
ピーンと閃き、私は、はいっと手を挙げた。

「ある!あります!」

前のめりな私に、大野くんはまた楽しそうに笑った。