餃子を口に含んだ瞬間、大野くんが不適に笑った。

「大手企業のエリート彼氏がいるって?」

「ぐっ!」

喉に詰まりそうになり、私は慌ててお茶を飲む。それでも大野くんは攻撃の手を緩めない。

「同棲を初めて結婚も秒読みなんだ?」

「ううっ。」

私は両手で頬を覆った。
大野くんにはすべてお見通しのようだ。

「アラサーなのに彼氏なしだよ。悪かったわねっ。」

「別にいいんじゃないですか?いつも恋人がいなきゃいけないわけじゃないし、いなくて死ぬわけでもなし。」

「でも私もういい年だし、いい加減彼氏作らないと行き遅れちゃうよ。」

いや、本当に。
アラサー独身彼氏なし。
すでに行き遅れ感が半端ない。

「じゃあ作ればいいじゃん。」

大野くんはあっけらかんと言う。
それができたら苦労しないのに。

「どうやって?彼氏ってどうやったらできるの?」

「姫乃さんマジで言ってます。今まで誰かと付き合ったことないんですか?」

私はとたんに顔が赤くなった。
彼氏いない歴=年齢の私。
経験も知識もゼロに等しいのだから、大野くんが呆れるのも無理はない。