大野くんの部屋は三階で、室内は物もあまりなく家具もとてもシンプルなデザインだった。
男の人の部屋へ入るのは初めてで、少し緊張してしまう。というか、テーブルを前にして正座をしている状態だ。少しどころかかなり緊張しているみたいだ。

キッチンでは大野くんがフライパンを振っている。今日は大野くんが作ってくれるらしい。私はそれをぼーっと見ていた。

目の前に出された湯気の立ち上るチャーハンと餃子。美味しそうな香りが漂う。

「すごい、大野くん料理男子だね。」

「今時の男子は作れて当たり前でしょ?」

「しっかりしてるね。」

感心しながら手を合わせていただきますをする。チャーハンは醤油ベースで香ばしさがありとても美味しかった。

「姫乃さんがぼんやりしすぎ。」

「え?私ぼんやりしてる?」

大野くんはチャーハンを食べながら大きく頷く。

「うわー。初めて言われた。なんか嬉しい。」

「変なの。」

「だって、まわりのみんなは私を完璧とか高嶺の花とか言うの。全然そんなんじゃないのに、どんどん話が大きくなっていく。私がちゃんと否定できたらいいんだけど、なんかタイミング逃しちゃうっていうか、流されるというか。」

「そういうところがぼんやりしてるよね。」

大野くんが冷静に言う。
大野くんにとって私は高値の花でもなんでもなくてただのぼんやりした人に見えているなんて、嬉しいのとちょっと情けなさも相まって苦笑いだ。