「え、全然できるじゃん。どこができないの?」

 
 数学で褒めてくれたのはZ先生が初めてだった。
 
 数学で30点以下しかとったことがないという事実を先生は嘘だと言って信じてくれなかった。

 それが本当に嬉しかったことを今でも覚えている。
 

 Z先生ともっと話していたい。

 
 そんな思いが勝手に芽生えていた。

 男子に偏見を持っていたなんてまるで嘘みたいだった。
 

 もうこの時からZ先生のことが大好きになっていた。

 それが先生としてという理由なのか憧れという意味なのか、恋という理由なのかはこの時はぐちゃぐちゃだった。
 

 なんか、わさびとケチャップとはちみつを混ぜたみたいな感じだ。
 
 それくらいZ先生が好きという意味が自分でもよくわかっていなかった。