今思えば、優しい男の人がいることは当たり前のことなのだろうけど、当時男の人は女の人をいじめる怖い人だと思っていたから、この気づきは私にとって男子への偏見をなくす大きなきっかけになった。

 父親と学校の先生以外の男の人と楽しく会話できている自分がとても信じられなかった。

 全部わからないと言って先生を困らせていたが、とりあえずこの日は当時学校で習っていた合同な証明をみてもらった。

「じゃあ、三角形の合同条件言ってみて」

「えーっと・・・三組の辺がそれぞれ等しい・・・二組の変とその間の角がそれぞれ等しい・・・一組の辺とその両端(りょうはし)の角がそれぞれ等しい・・・?」

「両端(りょうたん)ね。」

「そうなんですか?ずっと両端(りょうはしだと思っていました。」

「いや、両端(りょうたん)だから」

 男子と言い合いをしたのはこれが初めてだった。
 ただの言い合いだけでこんなに楽しいと思えた。

 昨日の自分に話したってきっと信じてくれはしないだろう。
 

 そんな感じで授業を進めていたのだけれど、どういう訳かZ先生に解説してもらわなくてもいつもより少しだけ数学が解けていた。