教室に入る前、最初にZ先生に言われた言葉。

 「俺今日どこやるか決めてないや。今、どこやってるの?」

 そんな他愛のない言葉ではあったけど、その一言が私の中にあった警戒心の壁を一気にぶち壊した。
 
 この先生なら、行けるかも。
 
 そう強く感じた。

「私も分からないです」

「そっか、そうだよな。どうしよう、どこやる?どこが苦手とかある?」

「全部苦手です。」

「そっか、それは困ったな」

 Z先生が困った様に笑った。
 それが苦笑いであったとしても、私はそれが嬉しかった。

 先生が笑ってくれてる。
 男の人でもこんな人もいるんだなって思った。