離れないで、紀乃ちゃん



彼女はポカンとしてこちらを見てきた。

1度可愛いと思うと、気持ちは留まることを知らなくて頭を撫でていた。


「あっ、俺何してんだろ」


勝手に俺が照れていると、彼女はそこまで気にする素振りもなく、


「……ハンカチ、洗って、あります」


と言ってきた。


「へ?…あ、こないだあげたやつ?
1度あげたもんなんだから、気にしないでよ」


思わず拍子抜けした。

男慣れしてるのかな…?

もしくは相当な鈍感…。


まあ、お兄ちゃんモード的なのが入って頭撫で撫でしちゃったのは、チャラ男認定ありえるけどね!


「……名前、書いたあったから…」

「名前…?」


ハンカチに、高校生にまでなって名前書くか?


「青いタオル地のやつだよね?」

「……うん」


いつから持ってるっけ…?


「あー、思い出した。あれ小5から使ってて、母親が名前書いたんだと思う。わー、紀乃ちゃんみたいな良い子で良かった!個人情報流出じゃんね!」


彼女は苦笑いしていた。

…待てよ?
これはチャンスなのでは?

ハンカチ返してもらうには、連絡先が必要とか何とか言って、LINE交換すべし!


「…もし返してくれるって言うなら、連絡先交換しない?」

「……いいですよ」


意外と何の躊躇もなく、QRコードを出してくれる。

もうひと踏ん張り、勇気を出すんだ、優聖!