離れないで、紀乃ちゃん



そう言うと、彼女は首を横に振った。

身長低くないよ?みたいな感じかな。


「いやいや、部員のほとんどが俺より身長高いからね。そんな否定しなくていいのに」


彼女は軽く目を伏せた。

ああ、自分より背高いから言っただけってとこか。


「……私、は…」


彼女も自己紹介しようとしてくれるらしい。


「……漢字、説明するの難しい…から、携帯に打っても、いいですか?」

「お、難読漢字?受けて立とう!」


携帯を取り出して、名前を打ちだした。

画面を向けられて、漢字を認識した。


「ことりゆきの?…あ、違うな。紀乃ちゃんだ。小鳥が遊ぶって、特別な読み方あったよなぁ」


うーん…。

何だっけな。由来聞いて、へえー!ってなった記憶はうっすらとあるんだが。

…あ!


「たかなし?」


当たっててくれ!

そう思っていると、彼女は嬉しそうな笑みを浮かべ、元気に頷いた。

…可愛い、可愛過ぎない?

心臓が跳ねるような感覚を隠すように


「良かったー!自力で読めたー!」


と言っておいた。

それなのに。


「……私も、嬉しい…です」


なんて、優しく微笑んで返してくるから…。

え、何?

一目惚れか何かなのか?
いや、初めて会ったわけじゃないから一目ではないんだけど。


「紀乃ちゃん、笑ってればいいのに。
めっちゃ可愛いよ?」