「あの、紀乃ちゃん…」

「……ごめんな、さい」

「違う違うっ!そんなシュンとしなくていい!」


俺がそう言うと、彼女は顔を上げた。


「紀乃ちゃんも、俺に会えるの嬉しいって思ってくれたんだ?」

「……うん」

「俺も。いや、紀乃ちゃんより楽しみにしてたかも」

「……何でですか」

「何でって…それは…」


気になってるからです!

…とか、バカなフリして言えって?


不思議そうな顔で、何ならすんっごいピュアな瞳で見つめてくる。

…ああそうだ。

ハンカチがまた理由にできる。


「ねえ。紀乃ちゃんが今日ハンカチ忘れたってことはさ、また会う機会は作ってもらえる?」

「……え、まあ…返す約束、したので」


他人行儀…かな。

少しだけ寂しさを覚えた。


「俺さ…」

「……はい」

「紀乃ちゃんと、仲良くなりたい」


彼女が少し口を開けた気がした。

でも何も言わない。


「俺だけ…かな」


わー、こんなこと言ったら気遣って、そんなことないです、とか言いそう!


「……私は、先輩が連絡先…聞いてくれたの、嬉しかったです」

「ん?」

「……今、まで、喋り方が変って、からかわれて、嫌になって…友達、できなくて」


彼女は1度息を吸った。


「……でも、先輩は、急かさずに聞いて…くれるから。…仲良く、してくれたら、嬉しいって、思ってました」

「おっ…ホント?」


仲良くしてくれたら嬉しいって…。