土曜日。
12時50分に、学校の前に着く。
ちょっと早く着いちゃったかな。
「あっ、紀乃ちゃん」
少しして、中から軽く駆けてくる紀乃ちゃんが目に入り、手を振った。
「授業お疲れ様っ」
紀乃ちゃんは、へっ?みたいな反応を示す。
…え、何かおかしかった?
「……休みの日にわざわざ…ありがとうございます」
「ええ?…いや、俺は会いたいから来ただけだよ」
本当に何考えてるのか分かんないな…。
「……ハンカチ」
「そうそう!今日の主な用事」
忘れかけてた。そこがメインなのであって、俺が勝手に考えていることは関係無いんだ。
紀乃ちゃんが、突然リュックを探る動きを止めた。
「おっ?どうしたの?」
「……忘れた」
「へ?」
独り言程度にそう言った。
ちょっとうっかりしたのかな。
「家に置いてきちゃった?」
「……会える、嬉しい、って気持ちで…いっぱい、
だったから」
え…?会える、嬉しいって…。
何それ、可愛過ぎ。
俺がちょっとでも気になってるの、分かってるのかな。
なんて思っていると、彼女は俯いてしまっていた。



