「全然平気。あ!相沢くん、ここで一緒に写真撮ろうよ」


気付けば相沢くんの写真を1枚も持っていなかった。



普段は写真なんて撮らないくせに、付き合った記念に1枚くらい相沢くんとの写真が欲しいと思ってしまった。



「じゃあ俺が撮るよ」



リュックからスマホを取り出した相沢くんがすぐ横に並び、長い腕を伸ばして慣れた手つきで自撮りしようとする。



そのほんの些細な行動にツキリと一瞬胸が苦しくなった。



………友達の多い相沢くんなら何度もツーショットくらい撮った事あるよね。



「………咲季?」



余計な事を考えたから、スマホの画面に映ったのは無表情な私の顔。

それを不審に思った相沢くんが声をかけてきた。



「あ、ごめん。何でもない」



慌ててすぐに営業スマイルを顔に貼り付けて撮り直そうとしていたら、すぐ横の玄関ドアが開いた。