……あ、そうだ。思い出した……僕は、火事で死んだんだった……ただの火事じゃなくて、放火。僕の家に火を付けたのは、実の父さん。理由は、分からない。

その時、ルクが僕に手を出してて、それを僕が掴んで……それで意識が途切れて……気が付いたら、死神寮にいたんだっけ。

「おい!若月は!?」

村上先生の声が響いた。その声に、僕は辺りを見渡す。

「……まだ校内にいるのかも……!」

絵芽の友達の声がした。悪霊の気配が、校内から……。

「……絵芽!!」

今までのことを思い出して、僕は校内に向かって走り出した。あの悪霊……絵芽を狙ってる!

霊感が強い人間は、悪霊に襲われやすいんだ。

「つ、月森くん!?危ないよ!死んじゃうって!!」

僕の腕を掴んで、絵芽の友達が叫んだ。確かに、そうかもしれない。でも、ごめんね?僕、もう死んでるんだ。これ以上、死ぬわけない。

「……それでも僕は行く。助けに行く!」

絵芽の友達の手を振り払って、僕の存在に気が付いたのか、校舎の中から降り注いでくる呪術を避けながら校舎に飛び込む。

それから、僕はペンダントを外した。それを制服の胸ポケットに入れて、あの時感じたのと同じ気配を辿って走る。