ロマンティシズム

 それが激しく刺激となったらしい。

雪野は真剣な眼差しで、白い紙コップの中に揺れる液体を見つめる。

凝視だ。
なにかを見つけようとでもするように。


「今年はこれで我慢しますけどね……」


 低くくぐもった声が、そう聞こえた。

続くブツブツは聞き取れない。

瀬戸は眉を寄せ、日和日向は身を乗り出した。

すると雪野は、手の中の酒を一息にあおり、


「来年は見てろ! 瀬戸啓明ッ」


 びしィ!