ロマンティシズム

 雪野は日向を振り返る。
こういうときは、姉より弟と決まっているのだ。

「知ってたんだ、日向。知ってたんだよね? 先生が今日ここに来るって」

「え。そりゃ。センセイにはケーキの引き取り頼んだんだよー。会場準備とどっちがいいって訊いたら、迷わず券を受け取られ為されましてさー」

 ピントのずれた上におかしな敬語だったが、回答は含まれていた。

つまり知っていた。要するに知っていた。

券をやり取りしたということは、どんだけ好意的に考えても、昨日からはわかっていたと断定して間違いはない。


「なんで教えてくれなかったのよーっ」