「麻里子、ねえあれ!見て!」
私は窓の外を指差した
「ちょっと、杏子!声でかいよ」
麻里子は身を乗り出し、窓の外を眺めた
校門の前で殴り合いを始めた男子生徒3名
1対、2の喧嘩だ
「先生ー?喧嘩してるよ」
すると担任は窓から顔を出し、
やめろー、と大きな声で叫んだ
「ねえ麻里子、どっちが勝つか賭けない?」
「じゃああたし2人の方」
「えーズルくない?まあいいや。あたし、1人の方で」
「いくら賭けんの?」
「販売機の100円ジュース」
「決まりね」
私達は窓の外を一心に眺めた
死んじゃえばおもしろいのにな、
なんて考えながら
「ちょっと杏子、あの人超強くない!?」
「この賭け、あたしの勝ちかもね」
「嘘マジー?頑張れよ2人も居るのに」
「て言うか、あいつ誰よ?」
私は1人で
2人に立ち向かっている男を
指差した
「3年の小林くんかな?」
「あんたほんと男に詳しいね」
「リサーチしてますからね」
麻里子は得意げな顔をして、
また窓の外に目をやった
しばらくすると、
2人の教師が走って
喧嘩をしている3人の元へ来た
必死に止めようとしてるけど
「ねえ杏子、あれ森と田中?」
全然、喧嘩の勢いは
収まるどころか、増していった
「あ、森殴られた」
私達は教師を呼び捨てにする
一種の反抗でもあるけど、
馬鹿にしているのだ
もう昔のように、
先生が偉い時代は終わった
「あ」私達は同時に間抜けな声を出した
「だっせーな…」
と、麻里子が舌打ちをした
私が賭けた小林という男子のパンチが
見事1人に命中し、
続けてもう1人に蹴りを食らわし
2人は倒れた
「小林やるじゃん!」
「小林、かっこいいかも」
「麻里子はすぐそれだね。彼氏のこと、好きなんじゃないの?」
「大好きだよ?愛し合ってるもん。でもさー毎日同じ相手じゃ、飽きるじゃん?たまにはねー」
麻里子が100円を財布から取り出し
私に渡した
「昼休み、放送委員の集まりがあるから自分でジュース買って」
麻里子は再び、
だっせーな、と
窓の外に目をやった