「ねえ」
「あ…ブス」
「あんたに弁解しても何の意味もないけど、あの人、正式に言うと、彼氏じゃなくて、彼氏候補なの。今、お試しでもいいから付き合えって言われて、付き合ってる。だから正確に言うと、まだ友達の段階なんだよね」
「それ、俺に言ってどうするわけ?」
「誤解されんのが一番嫌いなの。彼氏でもない人を、彼氏って思われるのもね」
私は富永の隣に座った
そして、寝転がった
「屋上ってさー、気持ちいいよね」
「声でかいぞ」
「心配した?私に彼氏が出来たかと思って」
「馬鹿か、お前。なんで俺がそんなこと思うんだよ」
「だってあんた、また、彼氏ですって言ったじゃん」
「ちょっとしたジョークだろ。真に受けんなよブス」
私はそのまま目を閉じた
太陽と、心地よい風が、
私を眠りに誘っていた
「おい、寝るなよ」
「いいじゃん。ちょっとだけ」
「俺、教室帰んぞ」
「待って。少しだけ、」
私はしばらくの間、眠っていた
夢を見た
富永と過ごした、小学生時代の夢
だけどそこに富永の姿はなかった
いくら探しても、見当たらなかった
変な夢
目が覚めたら、横で富永が寝転がっていた
「…寒い」
「お。起きたか」
「あたしら、何でこんな所で転がってるわけ?」
「お前が寝てたんだろ」
私は少しボーとしていた
「もうすぐ昼だから、皆屋上来んぞ」
富永が立ち上がった
「どこ行くの?」
堅いコンクリートの上で寝ていたからか
背中と頭に軽い痛みを覚えた
「教室戻る」
「なんで?いいじゃん。お昼も此処で食べようよ」
「何でお前と2人で昼食べなきゃなんねーんだよ」
「いいじゃん。今まで一緒に寝てたくせにさ」
富永が私に手を差し伸べた
「起きろよ。彼氏でもねー奴を、彼氏って思われんの嫌なんだろ。一緒に昼飯食ったら、俺と付き合ってるって誤解されんぞ」
私は差し伸べられている富永の手をつかんで
一気に立ち上がった