これで終わったなら、それほど話は大きくならずに済んだのだ。
泣きつかれて眠り、特に何をする気にもなれずに、ぼーっと週末を過ごして。
日曜日の午後に、放置していたスマホの存在を思い出した。
あの夜のうちに、充電が切れていたのだろう。
静まり返ったスマホを充電パッドの上に置くと、香耶はパジャマ代わりのゆるい部屋着を脱ぎ捨て、簡単に着替えをした。
明日は、月曜日。
平日勤務の職場のおかげで、たっぷり落ち込む時間があったことを感謝して、履きこんだスニーカーに足を入れる。
何か美味しいものでも食べて、ちゃんと仕事に行かなきゃ。
それで、彼のことを知っている友達に連絡をして。
仕事終わりに飲みにでも行って、しっかり愚痴を聞いてもらおう。
2日ぶりの外出で気分転換もでき、少しすっきりした気持ちで自宅に戻った香耶は、さっき充電パッドに置いたはずのスマホが落ちていることに気づき、首をかしげる。
「あれ?さっき……落ちたの、気づかなかったのかな……」
手に取って、充電パッドの上に戻そうとすると、ブルブルとスマホが手の中で激しく震えだす。
誰かから連絡があったのか……
納得した香耶が、明るくなったスマホの画面を見ると、並んでいた名前は全て、今最も思い出したくない男のものだった。



