「離婚?」
問い返した瞬間、思わず鼻で笑ってしまった香耶に、彼が一瞬、ムッとしたような顔をする。
「この流れなら、そういうこともあるかと思って……」
なぜそう思うのか、その思考回路が、全く理解できないけれど。
そんなもの、香耶にはなんの利益にもならない話で、考えてもみなかった。
大体、こんな男と結婚するだなんて、ゾっとする。
それ以上に、そんなことを夢見ていた、さっきまでの自分を思い出すと、自己嫌悪でいっぱいになった。
「土下座しろっていうなら……その、してもいいし」
言い募る彼に新たな一面を見た気がして、くらりと眩暈に似た脱力感に襲われる。
なんだかすごく重々しい感じで言ってるけど……
あなたの土下座に、それほどの価値があるんですか?
こんな男に恋していたなんて、自分はなんてバカな女だったのか……
はぁ、とため息をついて、香耶はこちらの様子をうかがう男に吐き捨てる。
「土下座なんか、してほしくない」
もう、さっさと帰ろう。
くるりとスカートをひるがえすと、今度は手首を掴まれる。
「……なに?」



