ウルルであなたとシャンパンを


食べたいと言う気持ちを我慢しながら、ものすごく美味しそうな黒い艶のあるケーキを見つめていると、そんな私の様子がおもしろかったのか、ルカさんは顔を横に向け、楽しそうな笑い声をたてた。

「年下だってわかったことだし、ルカさん、は止めない?」
「なんて呼べばいいの?」
「ルカ。さん、はいらない。友達も大体そう呼ぶし、僕はその方が落ち着く」

名前呼びなんて特別な相手としかしないけど、これがオーストラリア流なのかもしれないし、そうして欲しいと言われれば、香耶も従った方がいいように思えた。

「……わかった。じゃあ、ルカ、私のことも名前で呼んで」
「名前?……ああ、そうか。ヤマモト、はファミリーネームだよね」

そういわれて、ちゃんと自己紹介もしていなかったことに改めて気づいた香耶は、姿勢を正して、フルネームを名乗ってみる。

「香耶、です。山本香耶(やまもと かや)。香耶って呼んで」

そういえば、英語の教科書でこんなシーンあったな、と思いながらそう言うと、ルカさん……ルカは少しトーンを落とし、チェロの音のように深みのある声で香耶の名を呼んだ。

「OK、カヤ。今日は一緒に楽しもう」