ウルルであなたとシャンパンを


「でも、それはオーストラリアだけじゃないよ。日本にだって、違う国の人はいたよね?」
「いたけど……私の周りにはそれほどいなかったな」
「学校とか、職場でも?」
「うん……あ、同じ学年に中国の子がいたけど……それくらい」
「ああ、中国人はどこにでもいるよね。彼らはすごいよ」
「そっか……」
「でも多分、世界では日本の方が珍しいと思うよ。サコクしていたのはずっと昔のことなのにね」
「サコク……?」

サコクって……鎖国?

脳内で変換がした途端、クスッと笑いがこぼれた。

「え?何か変だった?」
「いや、その……言葉は変じゃないんだけど、普段の会話で鎖国の話とかしないから……なんていうか、新鮮で」

笑い交じりの香耶にちょっとすねたように眉をしかめてから、さりげなく伸ばした手で香耶のタルトの皿を引き寄せ、クリームから転げ落ちていたベリーの1つをフォークでさらった。

「あっ」

大人げなく声をあげてしまった香耶の反応を楽しむように、ルカさんはゆっくりと口に入れたベリーを咀嚼し、ちょっと意地悪そうに微笑んだ。

「僕のも食べる?」

どうぞ、というように、ルカさんはチョコレートケーキの皿を示してきたけれど。

さすがに香耶も、頷くことはできなかった。