ウルルであなたとシャンパンを


「そっか、ルカさんはクォーターなんだ」
「クォーター?」
「お母さんの方のおばあちゃんが日本の人なんでしょ?」
「そうだけど……その呼び方は好きじゃないな」

そう言われて驚くと、ルカさんも驚いたように目を見開く。

数秒の沈黙の後、ルカさんは何かを思い出したように、あ、と口を開いた。

「思い出した、ハーフ、だ。そうそう、そう言われたんだった。日本ではそう言うことが多いんだよね」

ちょっとだけ険しくなっちゃってたルカさんの眉が元通りになって、私もほっと一安心。

「ハーフって言われて、どうして”半分”なんだろう?と思ったんだ。なんだか僕が半分しかないっていうか……何か足りないと言われているような気持になったよ」
「そうだったの……ごめんなさい、知らなくて」
「いいんだ、知らなかったんだからね」
「……こっちでは、その、ルカさんみたいな人は、ミックスっていうのが普通?」
「オーストラリアでは移民の国だからね。人種が混ざっていない人の方が少ないんじゃないかな」

ルカさんの言葉で、香耶の頭に”人種のるつぼ”という言葉が浮かんだ。

その言葉は、確かアメリカのことだったと思うけれど、昨日から目にしてきた風景を思い出せば、気づかなかったのがおかしいくらいだ。