学校の門を潜り抜けると、親友の伊呂波が駆け寄ってくる。
「おはよー魅璃!今日は、肌寒いねぇ。
 夏は夏らしく暑くなってろっての。」
「あはは!そうだね!」
そしてそこにもう一人。
「おはよう。魅璃。」
「あっ!おはよう、咲哉(照)」
咲哉は、必ず目を見て笑ってくれる。
それは、咲哉は人の目の輝きでその人の気持ちを察することができるから。
「飼ってた猫...もしかして...」
「...うん。死んじゃった。」
実は今までずっと入院してた飼い猫が居なくなった。
でも年で死んだらしいから、悲しくない。
ただ少し...寂しい。
咲哉は、そっかとだけ言ってそれ以上触れないでくれる。
教室に入ると、男子のうるさい声が聞こえる。
中心で暴れまわっているのは、ガキ大将の諸星垓だ。
あいつは本っとにウザイ。授業中もうるさいし、逆に喉疲れないの?とか尊敬する。

これが私達の日常。つまり普通の生活。
でも、この日はちょっとだけ違った。

教室のドアを、開けて誰かが入ってくる。
クラスメートの光だ。
でも、誰も話しかけない。
いつもは誰か来たら必ず挨拶する皆が挨拶もしない。
そして私も、挨拶をしない。
空気で分かる。いじめの雰囲気。
逆らったら標的になることも。
光は恐る恐るドアを開けて入ってきた。
光が椅子を引くと、机の中から、ゴキブリが出てきた。
きっと、誰かが入れたのだろう。
「きゃぁぁ! あんたゴキブリなんか机で飼ってたの?!不潔ぅ。」
光が涙を堪えているのが遠目から分かる。

ごめん。。ごめんね。
でもさ、仕方ないじゃん。
そうしないと私もいじめられちゃうから。

思わず唇を噛み締めて、自分の席に座る。
ゴキブリが出てこないのを確認して、
ホッとする自分がいた。

一時間目が始まっても、光はずっと俯いたまま一言も喋らない。
まぁ、喋る相手も失ってしまったのだから。
数学の先生が入ってきて、ふと光の方を見た。そして顔を少ししかめて、その後は
      ナニモシナイ