3人の理想郷

迫り来る魔物の群れに俺は魔剣を振るった。

「スキル【連撃】!」
「スキル【刺突】!」

フォレストウルフ、フォレストゴブリン、フォレストビー。
スタミナを惜しげもなく奮発しスキルを連続で使用する。
俺は今、森林フィールドのフィールドボスの住処へと向かっていた。
情報屋によれば、フィールドボスはβテストと同じシルバーウルフ、別名『銀狼』だ。

(俺の記憶が正しければ、シルバーウルフの素材は良い剣の材料になるんだったか・・・)

βテスト、デスゲーム開始以前の『ブレード&マジック』ではシルバーウルフの牙や爪などのアイテムは【銀狼の刀剣】という特殊な刀の素材だった。
そして【銀狼の刀剣】はこのゲーム最初のエリア『1』にて最高峰の攻撃力を誇る武具の一つだ。

(ティルファングと二刀流で戦ってみようか)

そんな事を考えながら、俺は魔物相手にひたすら剣を振るっていた。
森林の奥へと進むことかれこれ数時間。
時間的には朝のはずなのだが、生い茂った木々が日光の侵入を阻んでいるためか辺りは少し薄暗い。

俺はひたすらソロで魔物を狩っていった。
レベル上げが捗るな。
俺はメニューを開き満足そうに自分のステータスを眺めた。

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シュウ
Lv.19
HP: 1869/2000
MP: 0/0
ST: 462/3700

【ジョブ】
-剣士 Lv.5
-魔剣使い Lv.1
-探索者 Lv.2
-狩人 Lv.1

【スキル】
-連撃 (剣士)
-薙ぎ払い (剣士)
-刺突 (剣士)
-聞き耳 (探索者・狩人)
-隠密 (狩人)
-気配察知 (探索者・狩人)
-魔剣召喚 (魔剣使い)

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レベルもかなり上がった。
もはやここらにいる魔物がパレードを作っていたとしても、殺られずに全滅させることが出来るだろう。
これならソロでもフィールドボスを討伐出来るかもしれない。
俺はまだ見ぬその姿を探すため、森林の更に奥へと足を運んだ。

日が落ちてきた。
森の木々の生い茂った葉や枝の隙間から綺麗な橙色の光が漏れている。
俺の握る魔剣が突如風を斬る。
足元に転がってきたのはフォレストゴブリンの中に稀に生まれる特異種【フォレストブルーゴブリン】の首部だった。
身体的な特徴としては、普通のフォレストゴブリンより小さく、そして素早い。
普通のフォレストゴブリンは肌の色が薄い緑色なのだが、特殊なフォレストブルーゴブリンは青色だ。

最も大きな違いは、魔法の使用が可能かはたまた不可能かである。
フォレストブルーゴブリンはその名の通り、水魔法を使用することが出来る。
しかし、精々使えるのは初級水魔法【ウォーターボール】くらいなもので、稀に中級水魔法【ウォーターウォール】や同じく中級水魔法【ウォーターバレット】などを使用出来るやつもいるっちゃいる。
βテストでは一時期その名を初心者狩りとして有名になったほどだ。

そして俺はそいつの首部を一撃の元に斬り落とした。

(もっと強い奴と戦いたい。俺をもっと戦わせろ。楽しませてくれ。)

俺はいつしかそんな事を考えるようになっていた。
そんな時だった。

「おい、アレって・・・」
「ま、マジかよ。確かに添付されてた画像に酷似しているが・・・」
「アイツを殺したら現実世界に戻ったあと、一生遊んで暮らせるだけの金を貰えるんだろ?」

そんな物騒な事が聞こえてきたのは。
俺はそいつらに目線を向ける。
若い男のプレイヤー二人だ。

「・・・何か俺に用か?」

そう声を掛けた俺を無視し、二人は互いに目を合わせる。
そして頷きあい鞘から得物を抜く。
二人は油断なく俺に向けて剣を構えた。

デスゲーム開始以前の俺なら、ここで平和的に交渉をしようと持ち掛け戦わずに穏便に済ませようとしたかもしれない。
でも今の俺は違う。
俺は無言で魔剣ティルファングを構える。
俺の口角が無意識に上がっていくのが分かる。
目を大きく開き、相手の一挙一動を見逃すまじと気合いを入れ見つめる。

瞳孔が蛇のように開き、エサを睨みつけた。


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「・・・ッ!」

あの二人は思わず息を呑む。
ビクッと身体を震わせたのが離れたここからでもよく窺える。
今頃冷や汗が全身を駆け回っている事だろう。
それでも、ご主人様の殺気を正面から受け止め、尚気を失わなかった二人は褒めるに値する。

・・・勝敗は戦う前から決まっていた。
狩る側、狩られる側はご主人様の殺気を込めた睨みで決まっていたのだ。
案の定、二人は恐怖のあまり奇声を上げながらご主人様へと突撃してきた。
あまりにも無謀である。

その光景を見たご主人様は何かを呟く。

次の瞬間、ご主人様は『私』を力強く、丁寧に振るった。

「バカ・・な・・・」

二人の頭部は身体から完全に切断されている。
流石はご主人様です!
私は素直にお世辞抜きで感心する。
並大抵の人が私を振るっても、二つのランダムに動くオブジェクトの弱点を一撃で斬る事は出来ないだろう。

ご主人様はつまらなさそうに私を振り、血糊を落としてくれた。
私を鞘に仕舞い込み、ご主人様は森林の奥へと向かった。