「お待たせ」
就職が決まった叶星は、友人の桃花(ももか)とランチの約束をした。

待ち合わせたのは桃花の職場近くのカフェ。
仕事モードの彼女は、後れ毛ひとつないきっちりとまとめた髪で現れた。

プライベートでは甘え上手で可愛らしさが売りだが、この時ばかりは年相応の大人に見える。

グラスの水を一口飲みほしてひと息つくと、桃花はフッと笑って肩を落とした。
「久しぶり、叶星」

弓なりに細めた目は可愛らしい。
桃花は仕事モードから切り替わり、叶星がよく知るプライベートモードの可愛い女の子になった。

「ほんと久しぶり」

こうしてふたりが顔を合わせるのは半年ぶりのことになる。

「あ、そうそう忘れないうちに、はいサービス券」
「おお、ありがとう」

桃花が働くエステは高級志向なので、普通のOLには敷居が高い。