長いゴールデンウイークが開けて、更に一週間が過ぎた。

「おはようございます」
「おはよう。休み明けは辛いわねぇ。まだ休み呆けが抜けないわ」
「私もです。朝が辛くて」

顔と名前が一致する社員が増えただけ、朝の挨拶も長くなる。
営業部の女性社員と休み中はどこに行ったのかと話をしながら、叶星はエントランスをくぐった。

「綺麗に焼けてますね、どこに行ったんですか?」
「私は、ハワイ。西ノ宮さんは?」
「シンガポールに」
「あら、いいわね」

休みを利用して、叶星は久しぶりに家族に会って来た。
叶星の実家は札幌にあったのだが、現地に住んでいる叔母に誘われたこともあり、いまはシンガポールに住んでいる。

贅沢三昧をしているかと心配していたが、意外なほど普通で、向こうで知り合った日本人の友達と楽しく過ごしているようだった。