『期待させないようにあえて酷いことを言うのは、優しさだと俺は思うがな? 間違ってるか? あ゛?』

『ま、間違ってないと、思います。はい』

半べそをかきながら東堂副社長の執務室から出たのは、一週間前。

――怖かったなぁ。
思い出したいまでも、クスンと泣きそうだ。


肩を落としてため息をつきながら通りを見ると、スゥっと止まった車から見覚えのある姿が降りてきた。

――ん? あれは『ヒムロス』の。
面接官だった彼は氷室専務。

そのまま見ていると、そのまま叶星がいる店に入ってくる。

店内を見渡し、叶星を見つけてニッコリと笑みを浮かべた彼は、真っ直ぐ叶星の席に向かって歩いて来た。

「ごめんね、担当が急に来れなくなったんだ」

謝られるどころか、謝りたいのは自分のほうである。
「すみません。こちらこそ」と、叶星は頭を下げた。