――もう少しで梅雨か。
久しぶりに小雨が降る外を、叶星はぼんやりと見上げた。

今日はランチ兼ねて、派遣会社『ヒムロス』の担当者と会うことになっている。
登録してから叶星の初めての仕事なので、状況を確認するとかなんとか。

早いもので、『兎う堂』に入社してから三週間が経っていた。

三か月契約なので残すところあと二ヶ月と少し。
いまはワコさんの元から離れて、野呂という男性社員とペアを組んで仕事をしている。野呂の仕事の面でのだらしなさに一抹の不安はあるが、今のところ仕事には大きな問題もなく順調に過ぎている。

が、しかし『兎う堂』には鬼が潜んでいる。この先も十分に気を付けなければいけない。
――東堂大毅。あの男は、やっぱり鬼だ。

まるで昔の刑事ドラマの取り調べのように詰め寄られて、桃花のことまで白状してしまった。