実際会ってみると、彼女は調査結果から想像する通りの女性である。

すらりとした体形に健康的なきめ細かい肌。派手ではないが隙のない化粧具合。清潔そうな純白のブラウスに紺色のリクルートスーツ。どこを見てもごく一般的な良識の持ち主であることが見てとれる。
どこに出しても恥ずかしくない、超優良物件だ。


氷室仁はあらためて、脳内に浮かべた調査結果を再検する。

彼女は前の職場に於いて何の問題も起こしていない。

たった二年とはいえ、組織の大きな流れの中で逆行することも立ち止まることもはみ出すこともなくキャリアを重ね、卒なく上を目指していたらしい。
そのままいけば恐らく部長クラスまでいけたのではないかと評価をする者もいたというのだから期待の新人だったのだろう。

ところが今から半年ほど前、彼女は突然退職を願い出た。