「きゃああ! やめてっ!」
スマートホンを奪い合ってアハハと笑い合ってふざけあって。
そしてまた抱きしめ合った。


「結婚しよう。叶星」

「副社長?」

「そのためにシンガポールに行って両親に頼んできた。イヤか?」


嫌なわけがない。

せっかく乾いた頬に、また涙が伝う。

「結婚してくれる?」

「はい」

唇を重ねながら思った。
どうしてこの人から離れようと思ったのだろう。
そんなことは無理なのに。

恋は、いつか冷めるという。

「副社長?」
「ん?」

でも恋が一瞬なら、その一瞬を繋げばいい。

「大好きです」

彼は弾けたように白い歯を見せて、叶星の髪をくしゃくしゃにしながらうれしそうに笑った。

――大好きです。
愛しています、私の副社長。


大毅は思った。

――叶星。お前の気持ちを考えた。

ひとりになって、落ち着いて考えてみた。