「ヨシタカだったよ。あいつの兄貴は」
「よしたか?」
西ノ宮ヨシタカと考えても頭に浮かぶ人物はいない。
大毅と共通する知合いのヨシタカを考えて、ふと思い出した。
「あ、もしかして、あのヨシタカ? リオのカーニバルの」
それはずっと前、まだ学生の頃だ。
道場の師匠がブラジルに指導に行くというので、大毅と仁は頼み込んで付いて行った。カーニバルに酔っていた街。勝手に出掛けてはいけないと師匠に釘を刺されていたのに、こっそり抜け出した。
『よっ、日本人』明るい笑顔で、そう話しかけてきたのは、自分たちと同じ年頃の若い男。
『付けられてるぞ。青いキャップと黒のキャップ、気づいているなら構わないけどさ』
何気なさを装い視界の端で捕らえた男ふたり。
気づいていなかったわけじゃないが、危機感まではなかった。
ごった返すほどの人混みの中で何ができるという油断。スペイン語も話せるという油断。
「よしたか?」
西ノ宮ヨシタカと考えても頭に浮かぶ人物はいない。
大毅と共通する知合いのヨシタカを考えて、ふと思い出した。
「あ、もしかして、あのヨシタカ? リオのカーニバルの」
それはずっと前、まだ学生の頃だ。
道場の師匠がブラジルに指導に行くというので、大毅と仁は頼み込んで付いて行った。カーニバルに酔っていた街。勝手に出掛けてはいけないと師匠に釘を刺されていたのに、こっそり抜け出した。
『よっ、日本人』明るい笑顔で、そう話しかけてきたのは、自分たちと同じ年頃の若い男。
『付けられてるぞ。青いキャップと黒のキャップ、気づいているなら構わないけどさ』
何気なさを装い視界の端で捕らえた男ふたり。
気づいていなかったわけじゃないが、危機感まではなかった。
ごった返すほどの人混みの中で何ができるという油断。スペイン語も話せるという油断。



