東堂副社長の、厳しすぎる初恋 +7/18

「ヨシタカだったよ。あいつの兄貴は」

「よしたか?」

西ノ宮ヨシタカと考えても頭に浮かぶ人物はいない。
大毅と共通する知合いのヨシタカを考えて、ふと思い出した。

「あ、もしかして、あのヨシタカ? リオのカーニバルの」

それはずっと前、まだ学生の頃だ。

道場の師匠がブラジルに指導に行くというので、大毅と仁は頼み込んで付いて行った。カーニバルに酔っていた街。勝手に出掛けてはいけないと師匠に釘を刺されていたのに、こっそり抜け出した。

『よっ、日本人』明るい笑顔で、そう話しかけてきたのは、自分たちと同じ年頃の若い男。

『付けられてるぞ。青いキャップと黒のキャップ、気づいているなら構わないけどさ』

何気なさを装い視界の端で捕らえた男ふたり。
気づいていなかったわけじゃないが、危機感まではなかった。

ごった返すほどの人混みの中で何ができるという油断。スペイン語も話せるという油断。