東堂副社長の、厳しすぎる初恋 +7/18



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あくる金曜日。
叶星は久しぶりにクローゼットからバッグを取り出した。

曇天ではあるけれど、雨は降ってはいない。
天気予報によれば本降りになるのは夜。晴天なら暑いし、出掛けるにはちょうどいい。ということで出かけることにした。
毎日毎日、朝から晩まで考えることは同じ。

枕を濡らして目覚めた今朝。最初にしたことはスマートホンの着信を確認したことだった。

朝ご飯を食べながら、セイさんの仕事を手伝いながら。昼食をとっていた時もその後、生け花を教えてもらっていた時も、ずっと神経はスマートホンに向きっぱなし。

「いい加減疲れた」
こんな自分にはもううんざり。

ペシペシっと両頬を叩き、その勢いでスマートホンをバッグにしまい込んだ。

「よーし、オッケー。もう、夜まで見ない」

ここへ来てから十日を越えているが、思えばそのほとんどを東堂邸の中に籠るようにして過ごしている。
それがよくないんだと思った。

リビングを覗くと、お湯を沸かしているセイさんがいた。

「セイさん。私ちょっと出かけてきますね」

「はい。ゆっくりしておいで」

「マンションにも行って風を通してきます。ずっと閉め切りだし。今夜はそのままマンションで過ごそうかなと思って」

「そうかい。じゃあ夕ご飯はいらないね?」

「はい。今日はご遠慮します」